既婚者との婚約

交際相手が既婚者だった

婚約男女

当事務所によく寄せられるご相談のひとつとして、既婚者と結婚の約束をしていたものの、その約束が果たされないというものがあります。
そして、このご相談には、交際相手を既婚者と認識していたパターンと、既婚者とは認識していなかったというふたつのパターンに分かれます。

既婚者と知らなかった

まず、相手が結婚していることを知らずに交際を継続し、将来の結婚の約束をしていたところ、ふとしたことから相手が結婚していることに気付いた結果、交際が解消されたので、慰謝料等を請求できるかというものがあります。

怒り

このようなケースに遭遇した人としては、将来結婚しようと約束していた相手と交際を解消しなければならなかっただけでなく、その交際解消理由は相手が既婚者だったことになります。
そうすると、受けるショックも非常に大きいとともに、怒りがこみ上げてくるものです。

既婚者と知っていた

また、既婚者とは知っていたけれど交際し、将来の結婚を約束していたというケースもあります。

このケースは事前に交際相手を既婚者と知っていたのですから、上記のように二重のショックを受けることはないのでしょうが、それでも結婚できないことについて大きなショックを受けることには変わりありません。

慰謝料を請求できるか

疑問

では、既婚者に対して婚約破棄・婚約解消を理由として、慰謝料等を請求することが可能なのでしょうか?

「既婚者であるにも関わらず、独身者と結婚の約束をするようなヤツには、慰謝料請求が出来るのが当たり前!」というのが一般的な感覚だと思います。
しかし、ことはそう単純ではないのです。

婚約が成立しているか

まず、婚約破棄・解消というからには、当たり前の話ではあるのですが、婚約が成立していなければいけません。
成立していない婚約を破棄・解消することはできませんから。
入社もしていない会社を退職することができないことと全く同じですね。

疑問

では、既婚者と独身者との間でも婚約は成立するのでしょうか?

私人間(一般の人という意味と思ってください。)の法律関係については、一般的に「民法」が適用されるところ、民法には婚約に関する規定が置かれていませんが、結婚に関する規定は置かれています。

重婚の禁止

六法

その民法の732条において「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。」とあります。
つまり、「既婚者は配偶者以外の人と結婚できないよ」ということで、これを重婚の禁止といいます。
そして、「婚約」とは「結婚を約束すること」です。

となると、既婚者は配偶者以外の人と結婚できないのですから、配偶者以外の人と結婚の約束をしたとしても、その約束は無効ということになります。
したがって、既婚者と独身者との間で婚約は原則として成立しません。

慰謝料等請求の可否

そして、前述のように成立していない婚約を破棄・解消することはできません。
そうすると、婚約破棄・解消にあたるとして、独身者から既婚者に慰謝料等の請求をすることはできないのが原則ということになります。

ポイント

ここがポイント!


既婚者と独身者との間で婚約は原則として成立しないため、婚約破棄・解消にあたるとして、独身者から既婚者に慰謝料等の請求をすることはできないのが原則。

婚約が成立する場合

もっとも、原則というからには例外があります。

婚姻関係が破綻している

その例外とは、既婚者の婚姻関係が完全に破綻している場合です。
なお、婚姻破綻はなかなか認められないのですが、絶対に認められないわけではありません。
どのような場合に婚姻破綻が認められるかについては、詳しくは→こちらの婚姻破綻とはを参考にされてください。

婚姻届

既婚者の婚姻関係が完全に破綻しているのであれば、実質的にその夫婦関係は終了していることになります。
そのため、配偶者と離婚届を提出するまでは、配偶者以外の人と婚姻届を提出することはできないものの、配偶者以外の人との結婚の約束は有効ということになります。

したがって、既婚者夫婦の婚姻関係が完全に破綻している場合には、例外的に婚約が成立する余地があります。

慰謝料等請求の可否

そして、婚約が成立しているのであれば、婚約破棄・解消にあたるとして、独身者から既婚者に慰謝料等の請求をすることができることになります。

なお、上記は既婚者と独身者の間で婚約が成立する余地があるということですから、実際に婚約が成立しているかとはまた別の問題で、単に口約束をしていた程度では婚約の成立が認められる可能性は低いです。
婚約の成立について詳しくは→こちらの婚約の基礎知識をご確認ください。

ポイント

ここがポイント!


既婚者の婚姻関係が完全に破綻している場合には、例外的に婚約が成立する余地があるので、婚約破棄・解消にあたるとして、独身者から既婚者に慰謝料等の請求をすることができる。

相手の配偶者から慰謝料を請求されないか

疑問

次に問題となるのは、既婚者と知らなかったとは言っても交際していたわけですから、相手の配偶者から慰謝料を請求されるのではないかということです。
なぜなら、交際中には性交渉を持つことが多いことから、それは不貞行為に該当する可能性があるからです。

相手方夫婦の婚姻関係が完全に破綻していない場合

慰謝料

前述のように、既婚者と独身者との間で婚約が成立するのは、相手方夫婦の婚姻関係が完全に破綻している場合です。
逆に言えば、婚約が成立しない場合は、相手方夫婦の婚姻関係が完全に破綻していないことを意味します。
そうすると、既婚者との性交渉を伴う交際は不貞行為に該当しますので、この場合は相手の配偶者からの慰謝料請求を心配する必要があります。

もっとも、交際相手の配偶者から慰謝料請求を受けた際に、慰謝料を支払う義務を負うのは、その人に故意または過失がある場合に限られます。
そして、「故意」とは相手を既婚者と知っていたこと、「過失」とは注意すれば相手を既婚者と気づけたことです。

故意または過失がある場合

交際相手の婚姻関係が破綻していない場合において、相手方が既婚者であることについて故意または過失があるのであれば、婚約が成立していないことから婚約破棄・解消を理由とした慰謝料請求はできません。
また、相手方の配偶者から慰謝料請求を受けた場合には、その支払い義務があります。

このケースが最悪ですね……

故意も過失もない場合

交際相手の婚姻関係が破綻していない場合において、相手方が既婚者であることについて故意または過失がないのであれば、婚約は成立していないことから、婚約破棄・解消を理由とした慰謝料請求はできません。
ここまでは故意または過失がある場合と同じです。
しかし、相手方の配偶者から慰謝料請求を受けたとしても、その支払い義務はありません。

ポイント

ここがポイント!


交際相手の婚姻関係が破綻していない場合において、相手方が既婚者であることについて故意または過失があるのであれば、相手方配偶者に慰謝料支払い義務がある。
逆に、故意または過失がなければ、相手方配偶者に慰謝料支払い義務はない。

相手方夫婦の婚姻関係が完全に破綻している場合

前述のように、既婚者と独身者との間で婚約が成立するのは、相手方夫婦の婚姻関係が完全に破綻している場合です。
そして、夫婦の婚姻関係が完全に破綻している場合は、自身の配偶者が他の異性と性交渉を持ったとしても、その他の異性に対して慰謝料を請求することができません。
例えば、妻から夫と性交渉を持った女性に対する慰謝料請求は認められないのです。
そうすると、この場合は相手の配偶者からの慰謝料請求を心配する必要はないようにも思えます。

「婚姻関係破綻→性交渉」という順番

しかし、これはあくまでも婚姻関係が破綻した後に性交渉を持った場合の話です。
つまり、「婚姻関係破綻→性交渉」という順番である必要があります。

この場合は、既婚者との間で婚約が成立する余地があります。
また、既婚者の配偶者からの慰謝料請求も心配する必要はありません。

「性交渉→婚姻関係破綻」という順番

逆に、「性交渉→婚姻関係破綻」という順番であれば話はことなります。

まず、既婚者との間で婚約が成立する余地はあります。
しかし、相手を既婚者と知っていた場合(故意がある)か、あるいは注意すれば既婚者と気づけた場合(過失がある)には、配偶者から慰謝料の請求を受ける可能性もあります。

ポイント

ここがポイント!


「婚姻関係破綻→性交渉」という順番であれば、既婚者との間で婚約が成立する余地もあるし、既婚者の配偶者からの慰謝料請求も心配する必要ない。
「性交渉→婚姻関係破綻」という順番であれば、既婚者との間で婚約が成立する余地はあるが、既婚者の配偶者から慰謝料請求される可能性がある。

内縁を破棄されても請求できる?

以上のように既婚者との婚約は原則として成立しないのですが、婚約と似て非なるものとして内縁関係というものがあります。
この内縁関係を一方的に破棄された場合に慰謝料請求はできるのでしょうか?
それについては→次のページ(内縁の不当破棄に対する慰謝料請求)で説明しています。

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